バターの豊かな風味と、サクサク、ほろほろと崩れる独特の食感が魅力の、「ショートブレッド」。
ところで、ショートブレッドにはなぜ「ブレッド(パン)」という名前が付いているのでしょうか?
また、表面に小さな穴が開いているのにも、ちゃんと理由があります。
今回は、ショートブレッドの名前の意味や穴を開ける理由、スコットランドでの歴史や種類をご紹介します。
ショートブレッドとは?

ショートブレッド(Shortbread)は、イギリス・スコットランド発祥の伝統的な焼き菓子です。
主な材料は、小麦粉・バター・砂糖の3つ。
基本的には卵を使わず、バターをたっぷり加えて作るため、濃厚な風味と、口の中でほろほろと崩れる食感が楽しめます。
伝統的な配合として知られているのが、小麦粉3:バター2:砂糖1という割合。
材料も作り方もシンプルですが、バターのおいしさを存分に味わえるお菓子です。
「ショート」の名前の意味・由来
ショートブレッドの「ショート(short)」は、「短い」という意味ではありません。
お菓子作りでは、サクサク、ほろほろと崩れやすい食感を表す言葉として使われています。
バターなどの油脂が小麦粉に含まれることで、グルテンの形成が抑えられ、もろく崩れるような食感が生まれます。
ちなみに、「ショートケーキ」の「ショート」も、もともとはこうした食感に関係する言葉です。
では、なぜビスケットなのに「ブレッド(パン)」なのでしょうか?
その理由は、ショートブレッドの歴史に隠されています。
ショートブレッドの発祥と歴史

ショートブレッドの歴史は古く、その原型は12世紀頃のスコットランドに遡るといわれています。
当時は、パンを作ったときに余った生地を低温のオーブンで乾燥させ、ラスクのように硬く焼いた「ビスケットブレッド」が作られていました。
やがて、パン生地に使われていたイーストの代わりにバターが加えられるようになり、現在のショートブレッドへと発展していったとされています。
つまり、ショートブレッドの「ブレッド」は、もともとパンから生まれたお菓子だったことの名残なのです。
スコットランド女王も愛したお菓子
16世紀には、スコットランド女王メアリー・スチュアートがショートブレッドを好んでいたと伝えられています。
特にお気に入りだったとされるのが、丸い生地を三角形に切り分けた「ペティコート・テイル」という形。
当時のショートブレッドには、キャラウェイシードなどで香りを付けたものもあったそうです。
現在では身近なお菓子ですが、昔はバターや砂糖が貴重だったため、誰もが気軽に食べられるものではありませんでした。
結婚式やクリスマス、新年のお祝いなど、特別な日に楽しまれていたのです。
結婚式でショートブレッドを割る?
スコットランド北部のシェットランド諸島には、ちょっと変わった結婚式の風習が伝わっています。
それは、新婦が新居に入る際、頭の上でショートブレッドを割るというもの。
細かく割れると、幸せで実りある結婚生活を送れると考えられていたそうです。
日本ではなかなか想像できない習慣ですが、それほどショートブレッドがお祝いと深く結びついていたことが分かりますね。
ショートブレッドの穴を開ける理由

ショートブレッドといえば、表面に並んだ小さな穴も特徴的ですよね。
この穴は、単なる飾りではありません。
焼いている間に生地の中の蒸気を逃がし、均一に焼き上げるために開けられています。
穴を開けることで、生地が部分的に膨らんだり、形が崩れたりするのを抑える効果があります。
こうした穴を開ける作業は、製菓用語で「ドッキング」と呼ばれています。
特に厚みのあるショートブレッドでは、中心まで均一に火を通すことが大切です。
何気なく見ていた小さな穴にも、おいしく焼き上げるための工夫が詰まっていました。
ショートブレッドの種類と形
ショートブレッドには、伝統的に3つの代表的な形があります。
フィンガーズ(Fingers)

細長い長方形のショートブレッド。
日本でもよく見かける形で、表面に小さな穴が並んでいるものが一般的です。
ラウンズ(Rounds)

丸い形のショートブレッド。
一枚ずつ焼かれた、シンプルな丸いビスケットです。
ペティコート・テイル(Petticoat Tails)

大きな円形に焼いた生地を、ケーキのように三角形に切り分けたもの。
名前の由来には諸説ありますが、昔の女性が身に着けていたペティコートの形に似ていることから名付けられたという説があります。
ミリオネアショートブレッド

伝統的な3種類とは別に、ショートブレッドを使ったアレンジ菓子もあります。
その代表が「ミリオネアショートブレッド」。
ショートブレッド生地の上にキャラメルとチョコレートを重ねた、3層仕立てのお菓子です。
サクサクの生地に濃厚なキャラメルとチョコレートが合わさった、贅沢な味わいが楽しめます。
ショートブレッドとクッキーの違いは?
ショートブレッドもクッキーも、小麦粉や砂糖、バターなどを使った焼き菓子です。
ショートブレッドは、イギリスではビスケットの一種として親しまれています。
一般的なクッキーには卵や膨張剤を使うものもありますが、伝統的なショートブレッドは、小麦粉・バター・砂糖を中心としたシンプルな配合が特徴です。
特にバターの割合が多く、ほろほろと崩れる食感が魅力。
ただし、クッキーにもさまざまなレシピがあるため、材料や製法だけではっきり区別できるわけではありません。
まとめ
スコットランド生まれのショートブレッド。
素朴な焼き菓子ですが、名前の由来や表面の穴、伝統的な形など、知れば知るほど面白いお菓子です。
かつては結婚式や新年のお祝いに食べられていた特別なお菓子が、今では世界中で親しまれているというのも興味深いですね。
次にショートブレッドを食べるときは、ぜひ表面の小さな穴や形にも注目してみてください。


