腕利きのアマチュアベイカーたちが、ベイキングの腕を競うイギリスの人気番組『ブリティッシュ・ベイクオフ』。
今回はシーズン5のラスト、決勝をご紹介します。
今回のエピソードでは、ヴィエノワズリー、ヴィクトリアサンドイッチやスコーン、そしてピエスモンテという3つのチャレンジに挑み、シーズン5の優勝者が決まります。
記事の最後にはベイカーたちのその後もご紹介します。
番組の流れ
各エピソードは3つのチャレンジから構成されています。
- オリジナルチャレンジ:参加者が事前に準備した自分のレシピで作るチャレンジ
- テクニカルチャレンジ:審査員が用意した最小限の指示だけで全員が同じレシピに挑むチャレンジ
- マスターピースチャレンジ:技術と創造性の集大成となる複雑なお菓子作りのチャレンジ
3つのチャレンジの後、その週最も優秀だったスターベイカーと脱落者が発表されます。
※今回は決勝戦なので脱落者は無し
それでは、実際の様子を見ていきましょう!
審査員・司会者

審査員
メアリー・ベリー

審査員
ポール・ハリウッド

司会
スー・パーキンス

司会
メル・ギェドロイツ
決勝に残ったベイカー達

ルイ
(デザイナー・養蜂)

リチャード
(建設業、2人の娘がいる)

ナンシー
(5人の子どもと8人の孫がいる)

オリジナルチャレンジ:ヴィエノワズリー

ついに決勝、友人や家族が集いリチャード、ナンシー、ルイの戦いの結末を見守ります。
- スターベイカーに5回も選ばれたリチャード
-
ルイ「あれだけスターに輝いたんだ。彼は優勝への道を突き進んでる。」
ナンシー「彼は週を追うごとに力が増してる。」
- 豊富な経験と安定感のあるナンシー
-
リチャード「不調だった週はないんじゃないかな。」
ルイ「彼女の作品を真っ先に食べたい。それほどすばらしいものを作る。」
- 想像力と芸術性で皆を驚かせてきたルイ
-
ナンシー「ルイには決勝で勝てる大胆さがある。」
リチャード「最初から優勝を狙ってた。」
決勝の最初のチャレンジはヴィエノワズリー。
「3人とも練習はバッチリだと思うけど、ライバル2人と並べば緊迫感や不安は大きくなる」とメアリー。
ポールは「ヴィエノワズリーは30年作り続けてるが、極めるのが難しい。デニッシュ生地なら層と食感を完璧にして欲しい。パン生地にするなら弾力が欲しい。」と話しました。
- ルイ
リンゴ・クルミ・レーズン・チーズのショソン
ラズベリーのパン・オ・ショコラ・ブラン - ナンシー
リンゴとレモンのカイト、
ラズベリー&アーモンドクロワッサン - リチャード
パン・オ・レ
梨のパン・オ・ショコラ

ルイは、リンゴやクルミ入りのショソンにチーズを散らし、パン・オ・ホワイト・ショコラ(正しくは「ショコラ・ブラン」)も作りました。
ラズベリーを挟んで巻く工夫を見せましたが、ベリーの重みで生地が沈んでしまう結果に。
でも、ショソンは「層もきれいでサクサクしている」と好評でした。

ナンシーは機械の力を最大限活用し、アーモンドとラズベリーのクロワッサンとレモンとリンゴのカイト(凧)形デニッシュに挑戦。
リンゴのカイトの底は、フランジパーヌのタルト風に仕上げました。
発酵が原因で割れが生じたものの、「味付けは最高」と評価されました。

リチャードは他の2人とは違い、2種類の生地を用意する大胆な戦略を取りました。
フランス滞在時の思い出のパン・オ・レ(ミルクパン)と梨を使ったパン・オ・ショコラに挑戦。
「決勝には地味だけど大好きだから選んだ」と語る一方、ポールからは「シンプルすぎるかも。危険な賭けだ」と警告されました。
美しい色に仕上がったものの、パン・オ・レがくっついてしまい、ポールから「完璧なものを求めていたが、これは違う」と厳しい評価を受けました。
オリジナルチャレンジ後のベイカーの感想は、
ルイ「前向きな感想をもらえたのは励みになるね」
ナンシー「完璧とはいかなかったけど、今回は決勝だから超辛口なんでしょうね」
リチャード「及第点をもらえないと途方に暮れるよ」
テクニカルチャレンジ:ヴィクトリアサンドイッチ・タルトシトロン・スコーン

次に行われたテクニカルチャレンジの課題は、ヴィクトリアサンドイッチ・タルトシトロン・スコーン。
初めて3つのお題が同時に出されました。
今回の課題に対してポールは「課題は週を追うごとに複雑になっていったが、基本に立ち返ろうと思った。」と話し、メアリーは「12個ずつ作ってもらうけど、2時間しかないという点は厄介ね。時間内に完璧なものを仕上げないと。」と話しました。
リチャード「これ見た?3行しか書かれてない。”ヴィクトリア・サンドイッチを12個、タルトシトロンを12個、スコーンを12個”」
3人とも同じ戦略で、まずジャムを煮詰め、タルト生地を作って休ませてから残りを仕上げる手順を選択。
リチャード「先にジャムを煮詰め、タルト生地を作って休ませ、残り全部を仕上げる」
ナンシー「他に集中できるようにペイストリーを先行する」

次はヴィクトリア・サンドイッチです。
ナンシー「ジャムはいつも手作りよ。マーマレードもレモンカードもね」
ルイ「ごまかしは効かない。基礎ができていないと疑問を持たれてしまう」
リチャード「バターを柔らかくして砂糖を投入したら、卵と小麦粉も入れる。これがスポンジの元になる」

続いて取りかかるのは、ペイストリー。
リチャード「メアリーの好みに合わせ薄くしたい」
ナンシー「分厚いタルト生地は嫌いだわ」
ルイ「気温が高いから薄くするのが難しい。つぎはぎは理想的じゃない」

最後はスコーン作り。
どれも基礎とはいえ時間との戦いは熾烈でした。
リチャードは途中で卵の分量を間違え、一からやり直すことに。
リチャード「間違えた。卵を2個入れたんだけど1個は最後に塗る卵液用だった。やり直しだ。」
ルイは「タルト用のフィリングはじっくり温めてる」と丁寧に進めましたが…
ルイ「液が沈んでる。悪夢だ。」
一方ナンシーは、
ナンシー「ジャムは硬すぎたかもしれない。でも流れ出るよりはいい。」
と冷静に対処していました。
評価と順位
今回は、ふわっとしたスポンジに高さのあるスコーン、サクサクのタルト生地が審査ポイントになりました。
まずはルイの作品から。
スコーン:白っぽくてツヤがないが食感は良い
ヴィクトリア・サンドイッチ:スポンジの上面の焼き色はきれい
タルトシトロン:焼き過ぎで、ツギハギしている、上に飾りがない
次はナンシーの作品。
スコーン:質感は良いししっかり焼けているけど、少し焼きすぎで乾いている
ヴィクトリア・サンドイッチ:完璧に焼けている、クリームは絞り出したほうが良かった
タルトシトロン:ツヤがあって良い、飾りの文字もきれい
最後はリチャードの作品。
スコーン:側面は平たく、中は柔らかく仕上がっている、上出来
ヴィクトリア・サンドイッチ:ジャムが水っぽ過ぎでスポンジに染み込んでいる
タルトシトロン:明らかに焼きすぎで、カスタードが卵焼きになってしまった
3位:リチャード(タルトシトロンがひどかった)
2位:ルイ(スポンジはいいが、タルトのほうは…説明の必要はないね)
1位:ナンシー(決めては見事なタルトシトロンよ)
テクニカルチャレンジ終了後、「1位という結果は明日への自信につながるわ」とナンシー。
ルイは「運が良かっただけで、実質僕が最下位だった」と話し、2つのチャレンジで不調だったリチャードは「もっと頑張れたら良かったけど、自分を責めはしない。明日は油断せず、ベストを尽くすよ。誇りに思えるような締めくくりにしたい。」と話しました。
マスターピースチャレンジ:ピエスモンテ

今シーズン最後のマスターピースチャレンジの課題はピエスモンテ。
18〜19世紀の壮大な装飾菓子を、5時間で作り上げる究極のチャレンジです。
- リチャード
丘の上の風車 - ナンシー
赤い風車 - ルイ
ヴィレッジインチョコレート
リチャードは地元の風車をイメージ。
スポンジとジャムで丘を作り、ショウガのスポンジを土台とした風車にクロカンブッシュを配置。
ブリトルで石の壁や翼を表現し、メレンゲのキノコも添える計画です。
ベイキング好きは14歳から。
家業を継いだ4代目のリチャードは、甘い”建材”もたくさん積み上げてきました。
リチャードの父「昔は地元のケーキ店でバイトをしてました。学校が休みの土曜日にね。ドーナツを揚げてたんです。ベイキングにも建設業にも決断力が必要ですが、息子には備わってる。」
リチャードの妻「結婚して13年ですが、夫は本当に謙虚な人です。番組での活躍を褒められても、調子に乗ることはない。何をしても誇らしい夫です。よき父親であることを除けば、この決勝進出は一番の誇りです」
ナンシーはフランスを意識した「赤い風車」(ムーラン・ルージュ)を制作。
4層のケーキの上にクロカンブッシュ、ショウガとオレンジのビスケットで風車を作り、赤いカラメルで翼を再現する妖しい雰囲気の作品を目指しました。
ハル育ちのナンシーは子育てを終え、40代で大学に入って経営学の修士号を取得。
結婚生活は20年です。
ナンシーの夫「何にでも全力で取り組む。犬を訓練してショーに出たりと一度決めたことはやり通す。」
ナンシーの孫「おばあちゃんは大会で一番のベイカーよ。バンズやレモンケーキの作り方を教わった」
ルイは地元ポイントンの古い炭鉱をテーマに選択。
チョコ風味のケーキを土台に、ビスケットで炭鉱の巻き上げ機を作り、シューの鎖で装飾する複雑な設計です。
ストックポート出身のルイは、仲間とのウクレレ演奏も楽しんでいます。
デザイン力は本業で磨いてきました。
ルイの妻「美大で出会った頃からクリエイティブで、その力はベイキングにも生かされてる。努力をした末に決勝に進出できたなんて、驚いたし…とても誇らしい。」
外には友人や家族の他、大会参加者も集い、最後のフェスティバルを祝います。
マーサ「戻れて嬉しい。2週間ぶりだけど、ここが恋しくてたまらないの。」
ケイト「テントに戻りたい。3人と同じように疲れて恐怖を味わいたいわ。」
チェトナ「誰が優勝するかしらね。接戦になるはずよ。」
イアン「3人とも決勝にふさわしいが僕はルイにかける。」
エンウェゾー「リチャードに1票だ。最後まで頑張ってほしい。」
ダイアナ「女性としてはナンシーに勝ってほしい」
マーサ「リチャードがいい」
ノーマン「1人に賭けろといわれたら間違いなくナンシーを選ぶ」
残り時間が少なくなる中、あめ細工の技術が試されました。
ナンシーは「緊張で手が震える」と語り、風車の翼が1つ取れてしまうアクシデントが発生。
ルイのシューの鎖も接着部分が外れてしまいましたが、無事に3人とも完成させることができました。
- リチャードの丘の上の風車
-
「色が面白い。お子さんは喜ぶね」とポールが評価。
クロカンブッシュの味は「一流の味」と絶賛され、ショウガの効いたスポンジも「すばらしい」との評価を得ました。 - ナンシーの赤い風車
-
「誇りに思っていい」とメアリーが称賛。
実際に回る風車のギミックに加え、「昔の誕生日ケーキの味」と懐かしさを感じさせる仕上がりでした。 - ルイのヴィレッジインチョコレート
-
「見た瞬間目が釘付けになる。芸術作品の領域だよ。」とポールが絶賛。
デザイン力とスキルは群を抜いていましたが、下層のスポンジが「パサつく」との指摘も受けました。
最終審査を終え、メアリーとポールは「今回は意見が一致した」と語り、ついに優勝者が決まりました。
結果発表
参加したベイカー達、家族や仲間が見守る中、ついに優勝者が発表されます。
メル「ブリティッシュ・ベイクオフ2014年の優勝者は…ナンシー!」

決勝でも高い完成度や持ち前の安定感で、優勝に輝きました。
ナンシーは「うまく説明できない。とても圧倒されていて言葉が出ないわ。でも感動してる。まさか自分が優勝できるなんて」と涙ながらに語りました。

メアリーは「彼女は才能とベイキング愛にあふれ、完璧にこだわる。この大会で優勝できるのはやはり完璧な人よ」と評価し、ポールも「決勝の条件をうまく味方につけ、その条件を見事にこなしてみせた」と称賛しました。
また一緒に戦ったルイは「すばらしい一日だったし、ふさわしい人が優勝したと思う」と話し、リチャードは大会を振り返り「僕は挑戦することの大切さを学ぶことができた」と清々しい表情で語り、素晴らしい決勝戦が幕を閉じました。
ベイカーたちのその後
番組の最後で紹介された、ベイカーたちのその後をご紹介します。




イアンは各地で味の研究をしつつ、
カフェ開業を夢見ている

ダイアナは庭の手入れを再開
友人たちはお菓子を心待ちにしている



マーサは試験をすべてクリア
学校の人気者になった彼女には、
大学で食品科学を学ぶという目標が
ベーキング本「Twist」や「Crave」などを発売

チャリティー活動に参加するチェトナは、
イベントのためにレシピを開発している
「The Cardamom Trail」や
「Chetna’s Healthy Indian」などを出版


ベイキングのレッスンを検討中のルイ
それを本職にできればと夢見ている
2015年に「Bake It Great」を出版
2020年11月に食道がんのため、
48歳という若さで亡くなりました

ナンシーは孫たちにベイキングを教えている
直近では娘のために、
ウェディングケーキを仕上げた
2020年に「Sizzle and Drizzle’」、
2021年に「Clean & Green: 101 Hints and Tips for a More Eco-friendly Home」を出版
今回はブリティッシュ・ベイクオフ シーズン5の決勝をご紹介しました。
次回は、『ブリティッシュベイクオフ シーズン5』の番組内で紹介された食に関する歴史コーナーをまとめてご紹介します。