その土地ならではの味を堪能できる「ご当地グルメ」。
今回は、その中でも特に特徴的なそばをエリアごとに紹介していきます。
通販があるものはリンクも掲載しているので、気になったものはぜひチェックしてみてください。
東北地方のご当地そば
岩手県:わんこそば
小さな椀に一口分ずつ盛られ、給仕が蓋を閉めるまで次々とそばを注ぎ続けるスタイルで知られるわんこそば。
もともとは南部地方のもてなし料理で、南部利直公が花巻城に立ち寄った際に、椀入りそばを気に入り何度もお代わりしたという花巻説や、盛岡出身の首相・原敬が「そばは椀コに限る。」と言って広まったという盛岡説があります。
花巻市では毎年2月11日にわんこそば全日本大会、盛岡市では全日本わんこそば選手権が開催されているそうです。
山形県:板そば
長方形の浅い木箱に盛り付けられることから名付けられた板そば。
農作業後にそばを振る舞うそば振る舞いの風習が由来となっていて、ご縁が「板につくように」という思いもこめられているそうです。
ちなみに木箱状の器は、日本海側の庄内では「そね」、新潟県の小千谷では「へぎ」と呼ばれ、それぞれ「そねそば」「へぎそば」と言われています。
山形県:つったい肉そば
河北町発祥の名物料理で、鶏肉やネギを乗せて食べるつったい肉そば。
「つったい」は冷たいという意味で、コシのあるそばと、上に乗った歯応えある親鶏、コクのあるだしが特徴で、寒さ厳しい山形では冬でも冷たいそばが定番なのだそうです。
山形県河北町では、そば屋で酒を飲み盛りそばで締める習慣から、馬肉の煮物をそばにかけるスタイルが生まれ、これが冷たい肉そばの原形となったと言われています。
福島県:高遠ねぎそば
箸の代わりに長ネギを使い、かじりながら食べるという、見た目もインパクト大な高遠ねぎそば。
このようなスタイルになった起源は、昔祝いの席や徳川将軍への献上品だったため、「切る」のは縁起が悪いとされ、切らずにそのまま使ったのが始まりと言われています。
辛味大根の絞り汁に焼き味噌を加えた「からつゆ」でいただくのも特徴です。
福島県では他に、そばの名産地・白河の郷士そば「白河そば」があり、割子と呼ばれる丸い重箱に小分けにして盛る割子そばも定番。
関東地方のご当地そば
茨城県:常陸秋そば
江戸時代から関東のそばどころとして有名な茨城県で、1978年に誕生したブランド品種・常陸秋そば。
香りの高さと甘みに優れていて、玄そば(収穫されたままの殻つきのそばの実)の最高峰と言われるほど。
具だくさんのけんちん汁におそばを入れ、つけ麺スタイル食べる「つけけんちん」は、茨城県の郷土料理として親しまれています。
栃木県:出流そば
出流山満願寺の門前そばとして、参拝者などに提供されていた出流そば。
大きな竹のざるに数人分を盛り付ける盆ざる蕎麦が名物で、4〜5人前の一升盛は迫力満点。
寒風にさらして熟成させた寒晒しそばは、甘みや深い風味を引き出した特別なおそばで、期間限定で味わえます。
出流町では1〜2月、八溝では夏まで寝かせて8月に提供されるそうです。
東京都:深大寺そば
江戸時代、寺の来客用に振る舞ったのが始まりと言われる深大寺そば。
元禄年間に上野・寛永寺の公辨法親王(こうべんほっしんのう)が絶賛し、広く知られるようになりました。
深大寺そばは麺の長さが一尺(33cm)で、蕎麦の実の中でも栄養価が高い1番粉を使用し、白っぽい色をしているのが特徴。
中部地方のご当地そば
長野県:信州そば
昼夜の寒暖差が大きく栽培に適しているため、古くから作られてきた信州そば。
信州そばは長野県で作られるそばの総称で、小諸そばや行者そば、安曇野そばや唐沢そばなど、多くの種類が存在します。
その中の一つ戸隠そばは、岩手県のわんこそば、島根県の出雲そばと並び、日本三大そばの一つと言われています。
新潟県:へぎそば
つなぎに布海苔(ふのり)を使ったそばを「へぎ」と呼ばれる器に盛った、新潟名物のへぎそば。
この地方では織物の緯糸(よこいと)を張るために布海苔が使われ、それを使ってコシの強いツルツルとした食感のそばが生まれました。
1口程度に丸める手繰りや手振りという方法で、盛り付けるのも特徴です。
福井県:越前おろしそば
冷たいそばに、たっぷりの大根おろしとネギ、鰹節とだしをかけて食べる、越前おろしそば。
越前おろしそばの名は、1947年に昭和天皇が福井でおろしそばを召し上がったことがきっかけで、後に「あの越前のそば…」と懐かしんだことに由来します。
黒っぽい見た目と風味の強さが特徴で、福井では寒い時期でもおろしそばが定番の食べ方なのだそうです。
近畿地方のご当地そば
京都府:にしんそば
甘辛く炊いた身欠きニシン(ニシンの干物)をのせた、京都のにしんそば。
明治時代に京都にある『松葉』が、貴重なタンパク源であるニシンとそばを合わせたにしんそばを発案し、現在でも伝承の味付けで作られています。
身欠きニシンは北海道の名産品で、北海道にもにしんそばがあり、北海道のものは濃口醤油を使った甘味のあるもの、京都は薄口醤油で塩味の強いだしを使うという違いがあります。
また北海道のにしんそばには、刻み海苔や白ネギが乗ることも多いそうです。
滋賀県:伊吹そば
1000年以上の歴史を持つと言われる、滋賀県の伊吹そば(伊吹在来そば)。
伊吹山中腹で栽培されている蕎麦の実は小粒でやや緑色なのが特徴で、のどごしが良く、上質な香りと甘みが感じられます。
青首大根の2倍ともいわれる辛味がある伝統野菜・伊吹大根のおろしを添えて食べるのが定番です。
兵庫県:出石皿そば
出石焼の白磁の小皿で提供される、出石(いずし)皿そば。
5皿1組のそばが1人前で、地元ではお橋を立てた高さの量が、成人男性の1人前とも言われています。
幕末の頃、屋台で持ち運びが便利な手塩皿(てしょうざら)で出していたのが起源とされています。
毎年春には出石そば喰い大会も開催され、2023年には驚異の153枚という最高記録が生まれました。
中国・四国地方のご当地そば
島根県:出雲そば
殻ごと製粉した濃い色合いのそばが特徴の、日本三大そばの一つ出雲そば。
朱塗りの丸い重箱で提供される「割子そば」と、湯がいたそばをそのまま味わう「釜揚げそば」が有名です。
1638年に松平直政が信州から出雲に移ってきた際に、そば職人を連れてきたことが、出雲そば文化の始まりと言われています。
山口県:瓦そば
アツアツに熱した瓦の上に茶そばと具材を乗せて提供される、下関市川棚温泉の名物料理・瓦そば。
熱した瓦は300℃近くにもなり、瓦で焼かれた茶そばは下はカリカリ、上はもちもちの食感に。
具材には錦糸卵や牛肉、好みでレモンの輪切りやもみじおろしなどの薬味を添えていただきます。
徳島県:祖谷そば
つなぎの粉を使用しないため麺が切れやすく、太く短くなることから「そばきり」とも呼ばれる祖谷そば(いやそば)。
地元のそば粉を100%使った祖谷地方の郷土料理で、源平合戦に敗れた平家が祖谷に逃れてきた際、そばの実を栽培し始めたことがきっかけと言われています。
温かいお出汁を注いで食べるのが一般的で、具材には油揚げやかまぼこなどをのせます。
九州・沖縄地方のご当地そば
長崎県:対州そば
縄文時代に中国から対馬に伝わったそばの品種で、強いコシとほのかな苦味が特徴の対州そば。
郷土料理のいりやき(鶏や野菜を入れて作る鍋料理)の締めとしても親しまれています。
2018年には、地域の農林水産物や食品の名称を守ることを目的とした『地理的表示(GI)保護制度』に日本そばとして初めて登録されました。
沖縄県:沖縄そば
そば粉を使わず、小麦をかん水で練って使った麺を、カツオだしや豚ガラ出しのスープで食べる沖縄そば。
具材は豚の三枚肉の煮つけ、棒かまぼこ、ネギ、紅生姜が定番で、ソーキ(豚の骨付きあばら肉)を乗せたものやテビチ(豚足)を乗せたものもあります。
細いストレート麺を使う八重山そば、平麺を使う宮古そば、ちぢれ太麺を使う大東そばなど、地域ごとに異なるスタイルが楽しめるのも魅力。
おわりに
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
気になるおそばはありましたか?
各地のご当地そばは、それぞれの地域の風土や歴史が反映された特別な一杯ばかりです。
旅先では、ぜひその土地ならではのそばを味わってみてください。